http://www.sponichi.co.jp/soccer/news/2011/11/22/kiji/K20111122002084420.html
■概略
売り上げ160%UP!川澄のひと言でついに工場増設
川澄PRで工場増設。なでしこリーグで無敗優勝を果たしたINAC神戸は21日、
熊本県内にあるスポンサー企業などを訪問。
FW川澄奈穂美(26)がW杯直後の試合で、「黒糖ドーナツ棒をご存じですか?」と
試合後のマイクパフォーマンスで大々的に告知したことで売り上げが急増した
「フジバンビ」は工場と配送センターの新設を決定。
“冬の時代”を支えた同社が想像以上の恩返しを受けた。
川澄効果が止まらない。
来季からユニホームの胸スポンサーとしてこれまでの10倍に当たる3年1億円の
再契約を交わしたばかりのフジバンビが今度は工場を増設することになった。
吉田高成社長(66)がうれしそうに明かした。
「川澄さんのひと言で7、8月はお客様をお待たせしてしまいました。
供給する責任があるので、工場と配送センターを作ることになりました」
発端はW杯直後の試合で、川澄が「黒糖ドーナツ棒をご存じですか?おいしいので
ぜひ買ってください」と同社の看板商品を熱烈PRしたことだ。直後から売り上げが急増。
11月10日に放送されたテレビショッピングでも6000個用意した4000円の
黒糖ドーナツ棒が20分で売り切れたほど今でも人気は衰えず、
前年比160%の売り上げを記録している。
吉田社長の感謝の念は尽きないが、同社は2年前から支援を続けてきた。
“冬の時代”を支えてくれた同社への感謝の思いが込められたマイクパフォーマンスから
発展した工場増設。それが川澄流の恩返しとなった。
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「勝つ事で恩返しをします」と表現するアスリートは多い。
確かに、全般論で言えば、それは間違っていない。
但し、スポンサーシップというモノサシでシビアに言えば、
必ずしもそうではない。
勝っても、実質的な恩返しにならないケースが非常に多い。
(精神論・感情面・福利厚生面などでの恩返しにはなるかもしれない。
ただ、スポンサーシップの殆どは、ビジネスメリットを期待されるのが、
本質的なスポンサーシップなので、そういう面では、恩返しの域まで
達しない場合が非常に多いと言わざるを得ない。)
寄付金を頂くのであれば、勝つだけで良いかもしれない。
しかし、協賛金を頂くのであれば、
プロ意識を持って、その先を考えなくてはいけないのが現実。
直接面談する選手には、できる限り、このような
「スポンサーシップとは・・・」という基本を説明して、
何故、勝つ事が恩返しにならないかを説明する。
協賛企業がスポンサーメリットとして望んでいるのは、勝った後の話。
勝った事によって、メディア効果が出たとか、売上向上したとか、
そのような現実的なメリットを望むのが、ビジネスであるスポンサーシップ。
ここを間違えているアスリートが非常に多い。
「勝つ」ことで止まってしまい、
「勝てば」、自動的にメディア効果や売上効果が上がるものと勘違いする。
勝っても、メディア効果や売上効果が出るとは限らないから、
勝った後をキチンと追いかけるのが、スポンサードされたアスリートの責務でもある。
これを判らない選手が多い。
ただ、それを選手の責任にするつもりは無い。
それを教える場が、スポーツ界に無いのがそもそもの課題原因だ。
何故、勝っても、それらの効果に直結しないのか?
マイナー競技ほどに、メディアリーチは無いし、
勝つ事が、いわゆる広告効果にならない。
故に、それだけでは企業の売上向上に結び付かない。
だから、できる限り接触するアスリートに対して、
勝って恩返しします、という言葉を修正するように指導するケースが多い。
何故なら、それは、
資金提供する企業視点から言えば、
この選手はスポンサーシップというものを判っていないな、と思われてしまうから。
アマ選手でもプロ意識が必要だから、
1歩先を行く、これから生き残るアスリートは、
アマだから判らないのであろうと企業に思わせるのではなく、
アマでも、プロ以上のプロ意識を持っているな、と見せるべき。
更にアスリートには、広告露出からの売上貢献ができないならば、
現実的には、他の貢献で補うべきだと伝えています。
他の方法で貢献できると。
スポーツ界は、どうしてもプロ野球・Jリーグといった、
国内TOPスポーツの周辺事情が基準になって、プロ事情をアマが真似るケースが殆ど。
その原因は、リーチの高いテレビ露出スポーツと、
テレビ中継の無いスポーツをごっちゃにしているから。
つまり、スポーツ=広告露出効果、という図式が全てに当てはまると勘違いされているから。
(だから、胸にロゴを貼るから価格不相応な資金を下さい、というアスリートを生んでしまう。
だから、テレビ露出の無い競技の依頼の仕方を教える教育機関が必要だ。)
ファンに対しては、プロもアマも「勝つ事で恩返しします」と堂々と言っていい。
しかし、スポンサー企業はそれでは満足しない。
勝った後にどんなスポンサーメリットが出るのか、ここを問われる。
勝っても、広告露出効果が期待されそうに無い、と判断されると、
どんなに強くても投資されない。それが現実だ。
だから、マイナー競技のアマ選手が投資されやすくなる為には、
具体的な、価格相応なスポンサーメリットをキチンと提示する。
これがスポンサー獲得率を上げるカギとなる。
アスリート・コーチ・監督は、ここを磨くと、
スポンサー獲得率は飛躍的に上がる。
騙されたと思って、やってみてほしいものだ。
・・・・・・・・・・
前段が長くなったが、
話を上記の川澄PRの記事に戻そう。
売上160%なら協賛企業も喜びますよね。
マイク発言という「広告露出効果」が、その後の「売上向上」に直結したのだから。
仮に、この発言がマスメディアに乗らず、
競技雑誌1誌にどんなに大きく掲載されても、売上向上には結び付かなかったはず。
故に、上記で言うところの、
「勝った」から恩返しできたのではなく、
勝った後に、スポンサー貢献をマスメディアに乗せた事で、売上に直結させた、
という所でスポンサーシップが成立している。
つまり、
「勝つ事で恩返しをします」と表現が、単純に結果に繋がったのではなく、
選手がPR貢献する事と、それをマスメディア活用できた事が、
連動した為に、結果的に、
「勝つ事で恩返し」できたというケース。
ぶっちゃけ、川澄選手が売上向上という着地点を最初から計算済みとは思えない。
大舞台での発言が、メディアに乗ったのは結果論だ。
しかし、常日頃から、
協賛企業をPRしなくちゃいけない、という使命はキチンと持っていたはず。
そうでなくちゃ、こういう場面で、中々PRなんてできないですからね。
マイナー競技のアマ選手は、周辺にマスメディアがいなければ、
この記事のような結果を計算するのは難しい。
しかし、広告露出しなくても、企業売上に貢献できる方法はいくらでもある。
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もう1つ、この記事から大事な事が読み取れます。
そもそも、企業は、協賛によって売上が○%上がりました、なんて情報を出してくれない。
だからアスリートは、
スポンサーシップをプロ意識で認識して、キチンと聞くべき。
自分が協賛させて頂いて、どの位の具体的な効果がありましたでしょうか?と。
ぶっちゃけ論で、
マイナー競技・アマ選手が、いつも実質的な売上貢献を高く実現するのは難しい。
もちろん、±ゼロ以上をスポンサーメリットで目指すのは、アスリートの使命だ。
しかし、仮にそれが難しい結果になろうと、
精神面から、又、人(社会人)として、企業に貢献する誠意を言葉に表すべきです。
キチンと常日頃から売上貢献を頭に入れている、という誠意を見せるべき。
そういう精神が、企業の気持ちを変えるし、中長期的な支援に繋がる。
F1とMotoGPで、協賛効果(企業の売上UP額)を出してもいいか?と尋ねた事がある。
その時は、経営情報だから出してもらっちゃ困る、と言われたケースもある。
そう、上場企業は売上や利益が公開されるが、
非上場企業は公開義務が無い事も関係するし、
他売上と重なった、スポンサーシップonlyの効果額を出しずらかったり、
明確に、極秘にしたいという考えを持つ企業も多い。
だから、世間一般に、スポーツスポンサーシップの売上効果が出回るケースは少ない。
(だから、スポーツ界も、これだけ広告が出たでしょ、という所で止まってしまう事に
甘えているケースが多い。企業はその先を望んでいる。
CSR系のスポンサーシップだと、その結果が出るまで時間が掛かる。
しかし、必ず、時間が掛かっても、実質的な数値を伝えなくてはいけない。
スポンサードされる側のミッションだ。)
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