スポーツと関係無いので、ここでは述べる必要がないであろうと思っていましたが、
ちょっと言わずにはいられない事がありまして、個人意見を・・・
(あくまでも個人意見です、設計屋は既に卒業して、今はスポーツ1本ですが、
ちょっと言わずにはいられないので・・・)
東日本大震災は大きく2つの要素が生まれてしまった。
地震・津波という自然災害。これは非常に大きな事。
その大きさは、過去比較で言えば、想定外だったかもしれない。
そして、もう1つの要素=原発放射能問題・・・・が、地震・津波と
同格のポジションと言える程の問題である事。
地震・津波が無ければ、福島原発は何も問題無かった、という話ではない。
原子炉は破壊されずに済んだ、、、というレベルの話ではない。
人類の最高英知を投入すべき原発の場合、
周辺機能不全は、原子炉破壊に匹敵する程の話である。
ここを正しく認識する必要がある。
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過去、構造設計に従事していた事があるが、
建築基準法に則した建築構造計算をベースに、構造物の倒壊防止、
又、一部倒壊しても人命に危害を与えない構造物を考える、というのが基本。
ただ、関わっていた案件は、建築物ではなく、特殊設計物ばかり。
事例の無いものも多く、そういう意味では建築設計より難しい側面もあった。
動く構造物である遊技物周りや、大型集客装置や、パビリオン等・・・
建築設計系チームだけではなく、機構設計系チームと協議を繰り返し、
建築・機構という異なる2つの側面から、安全設計を追求しなくてはならなかった。
(大型なモノや、危険なモノは、人命を奪うリスクがあるので、とにかく慎重さを要した)
建築系の視点での安全性確保とは、建築基準法に従うしかない。
機構(機械設計)系は、各種指針はあるものの、少々曖昧な点が多かった。
物理的な機械物・単体の安全は確保される、
しかし、マクロな安全設計に難がある場面が多く、
それを統合的にチェックしなければならない・・・という仕事ばかりだった。
安全設計とは、全体で俯瞰しなければならない。
パーツ単体が安全でも、そのパーツを「つなぐ部分」が安全未満であれば、
全体として安全設計とは言えない。
その、つなぐ部分が一番重要なポイントである。
異なる分野のパーツをつなぐ部分は責任も曖昧になりがち。
互いに専門分野ではない、という場面が発生するし。
地震などの解析を理解する程に、つまり、専門家になる程に、
安全設計とは、二重・三重・四重に対応策を考えなくてはならない。
プロであれば当然であり、リスクが出そうな所を解決する、、、
むしろ、リスクを想像する思考が大事だと考えていました。
(リスクを想像できれば対策を考えられるから)
自分は、建築物のような動かない物体の設計だけではなく、
動く物体の設計にも関わった。
そういう観点で、一番身近で、手本となるのが「自動車」であった。
車はあらゆる技術の集合体であり、各専門分野の「間(つなぐ部分)」が重要。
エンジンという動力設計、走行時のねじれや遠心力や金属疲労を考慮した車体設計、
雨侵入を防ぐ防水設計、人命を守る装備設計、
様々なメーカータイヤにも対応できる車軸設計、、、、言い出したらキリがない。
この全てを統合し、隙間のない安全設計を行なう自動車は、
複合技術の固まりとして偉大である。
そして、その技術的な偉大さを、使い手に感じさせない。
使い手は、そのような安全性は、有する事が当然・常識と考え、
仮に安全性が不足しているなら、プロ失格と烙印を押す・・・・・当然である。
だからこそ、安全設計のプロは、各パーツの専門分野だけでなく、
異なる専門分野をつなぐ部分の安全性確保に抜かりは無い。
高度なチェックをパスしなければ市場に出ない。
そして、自動車は、安全設計を大きく2つに分けている。
@アクティブセイフティ=事故が起こらないようにする安全追求=ABS等
Aパッシブセイフティ=事故が起きても安全追求=エアバック等
建築物や機構物は、とかく@のみの設計に走りがちだ。
Aの思考が欠落する部分が多い。
事故が起きたら救急車を呼ぶ?オペレーションだけでは済まされない。
・・・・・・・・
何故、このような話題を書いたか?
無論、今回の原発に関係しています。
原発は、建築物という認識では捉えられない。
その何倍も中身の安全性が追求されるものだから。
建築物のみの視点であれば、建築基準法に即した構造設計をすればいい。
しかし、ここにも落とし穴はある。
構造計算上、最後に算出された安全率が1.0を下回る数値ならOKとするが、
0.9でOKとするのか、0.3でOKをするのか、これは構造設計者に委ねられる。
自分も、周辺状況やAを考慮して、0.3程度でOKとした案件がいくつもあった。
しかし、コストに影響するから、もっと安全率をギリギリにして0.9位にしてよと、
周辺から押される場面も数多く経験した。
1.0以下なら法律上、OKなんでしょと・・・
確かに0.9でも計算上は法に順守しているし、設計としてOK。
仮に0.25なら、4倍の安全域を見込むので、
コスト上、無駄(過剰安全設計)と言われかねない。
ただ、それは、リスク・イマジネーションできる者にしかわからない事。
単体ではOKであっても、隣にリスクあるモノが配置されていたり、
子供逃げ道を想像するなり、
法律上の計算書には出てこない要素も考えなくてはならない。
言い方を変えれば、法以上の安全設計をする必要があり、それは設計者の判断による。
原発設計そのものには携わった事はないが、安全設計とは何ぞやという面で、
チェルノブイリ事故には大きな関心を持ち、@Aという視点から、
その安全に対する思想・思考・戦略を勉強させられた。
(大手ゼネコン設計部の同僚なども、原発関係は特殊だと口を揃え、
やはり安全設計も、通常の建築物とは別格のリスクヘッジが必要なのは判っている。
土木ゼネコン関係者が、自案件として掘った地下鉄に一切乗らずに、
地上をタクシー移動している話さえあるし。)
原発は、上記の自動車の10倍、100倍、安全性を追求しなければならない。
「想定外」は有り得ない(津波データは過去から提示されていたし)。
建築的に言えば、1.0以下の法律上、0.1であれば良かったのでは?
と評論家から言われても仕方ない。(建築物自体は破壊を防止できたが)
機構的な視点から見れば、地震で倒壊しなくても、中身は壊れないのか?
中身に連結されるパイピングは大丈夫なのか?機構のバックアップは何重?
二重なんて当然、三重、四重にリスクヘッジは、どこまで設定しているのか、、、、、
あらゆるダメージ・イメージングへの対策をするのが、最先端技術関係者のプロたる対応。
古い設計基準であっても、地震には確かに耐えた。
津波は、過去事例のない程に大きなものだった。
それでも本体は壊れなかった。
ここまではプロの仕事として当然。それを実現するのがプロだし。
しかし、物理的な「つなぐ部分」と、ソフト的な「つなぐ部分」は、
正直言わせて頂くと、プロの仕事と思えない。
建築的な視点での安全追求ではなく、機構的な視点での安全対策ができていないから。
古い設計だから仕方無いという意見もあるが、
マクロな設計思想があれば、古いから使うのを止めよう、、、という単純な話になる。
そこには、様々なシガラミがある事でしょう。
新たな予算取り、住民対応、体制、、、、それはそれは世間には見えない大変な事です。
しかし、安全設計者は、
そんなシガラミを打破し、人命最優先の設計をしなければならない。
誰に何と言われようとも、金が掛かろうとも、人命最優先の設計が必要。
ただ文句を言いたい為に、スポーツと関係無い話をしているのではなく、
ぶれない気持ち・折れない心・信念を、全ての人間が持たなくてはならないと言う教訓から、
特にアマチュア・アスリートは、
妥協せずに目標達成を目指してほしい、という意味を込めています。
まだまだ行方不明者が多数の段階。
緊急支援と開発支援の境目が、まだまだ見えてこない。
まだまだ被害の入口にいる。
しかしながら、キリのいい、多くの人が新年度となる4月に入った事で、
無理矢理にでも気持ちを切り替える事も必要かもしれない。
地震、津波自体は天災だ。
しかし、その過程を追求すれば、地震が来ても問題が発生しないようにするべきが原発設計。
津波が来ても問題が発生しないようにするべきが原発設計。
どんな経緯でも、放射能周りの問題を発生させてはいけない、
と、究極の安全設計で望むべきもの。
東電関係者が、天災ですから、、、なんて言葉は御法度である。
(自分も、仕事面で東電に御世話になった事があるが、ここは明確な立場を取らせて頂く)
PS・浜岡原発は、建設時から心配しています。
可能性が高い東海地震・予想区域のド真ん中に建築されたから。
安全設計に完璧は無い・・・・人が造るものなので、予測不足も発生しがち。
(故に、どれだけリスクを考えるかが大事)
だからこそ、もっとマクロな視点で見れば、そもそもリスクの高い場所には建てない、
というのがプロの見解のはず。
無論、様々な周辺事情があるから、たかが一外野が、反対とは言い切れない。
電力が無ければこれほど経済影響するので、原発に頼らざるを得ない事情もある。
だが、しかし、この安心安全の時代に、わざわざリスクの高い場というのは納得の
いかない基本設計である。
武田邦彦先生(http://takedanet.com/)も、表現の仕方は色々言われているが、
安全追求の根本の所で、信頼しています。
関西で以下のように述べているようです。ごもっともです。
http://www.youtube.com/watch?v=gW8pfbLzbas&feature=related
色々な御立場があるでしょうが、シガラミを破ってここまで言える方はいません。
原発に関わらず、国絡みの施設設計や安全設計の仕方を象徴した意見。
特に建築系の方なら、多くの人が認識ある事(誰でもとは言えないが)。
PS・次に来る大きなリスクが環境破壊(いや、既に始まっているが)。
これは国家を超えて、地球規模だから、取り返しのつかない状況になれば、
人類全体の生き方に影響する。
安全設計という視点で見れば、非常に遅れている。
短期的なリスクが目の前で見えれば、知識の無い方でも関心を寄せる。
しかし、地球全体のリスクは、じわじわ事が進むので、目の前で見えにくい。
報道などに頼るしかない、、、、しかし、そのスピードは脅威的であるし、
全ての人が、リスクを目の前で見る頃は、既に取り返しがつかない。
(現時点で、宇宙人が超最先端・技術革命を人類にプレゼントしてくれた所で、
もう間に合わない、という見解もある)
故に、今回の東日本大震災は、あらゆる事に対する意識改革を促すものとなるべき。
それは国家に対するもの、スポーツに対するもの、経済に対するもの、色々あるでしょう。
原発、産地偽装、犯罪、環境破壊、、、、あらゆる面で、「安全・安心の時代」
あらゆる面での安全神話崩壊が、社会不安を起こす。
心理的な回復が、現地復興・経済復活といった開発面や未来に影響する。
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■ソース(朝日新聞2011年4月7日0時25分)
http://www.asahi.com/national/update/0406/TKY201104060520.html
■概略
電源喪失、認識の甘さ陳謝 保安院・安全委トップら
東京電力・福島第一原子力発電所で深刻なトラブルを招いた、非常用を含めた電源喪失事故。経済産業省原子力安全・保安院や原子力安全委員会のトップらが、6日の衆院経済産業委員会で、電源喪失を「想定外」としていた過去の認識について陳謝した。
この日、これまでに原発問題を国会で追及してきた吉井英勝衆院議員(共産)が質問。原子力安全・保安院の寺坂信昭院長は昨年5月の同委で、電源喪失は「あり得ないだろうというぐらいまでの安全設計はしている」と発言していたが、この日は「当時の認識について甘さがあったことは深く反省をしている」と述べた。
これまでの法廷証言などで電源喪失の可能性を否定してきた班目春樹・原子力安全委員長は「事故を深く反省し、二度とこのようなことが起こらないようにしたい」と答えた。
また、過去に同様の見解を示してきた前原子力安全委員長(現・日本原子力研究開発機構理事長)の鈴木篤之氏も「国民の皆様に大変申し訳ないと思っている。痛恨の極み」。電源喪失の事態に備えてこなかったことは「正しくなかった」とした。
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