http://www5.nikkansports.com/sports/motor/kawakita/entry/20090728_82740.html
■概略
1週間前に往年のF1世界チャンプ、ジョン・サーティースの息子、ヘンリー・サーティースが
イギリスF2で事故死。ハンガリーGPではフェリペ・マッサが予選中の事故で重症。
ヘンリーは、アクシデントで外れた他マシンのタイヤが、後方のヘンリーのヘルメットを直撃。
マッサも、他マシンから外れたサスペンションがヘルメットに当たり、意識を失いタイヤバリアへ。
ハンガリーGPを終えた今、99%のモータースポーツファンを敵に回す覚悟で
提案したい。「フォーミュラカーの定義を根本的に見直してはどうか」と。
F1はフォーミュラカーレースの頂点。
一般的イメージは、「屋根無し+1人乗り+タイヤむき出しで専用設計の純粋レーシングカー」。
60年代「葉巻型レーシングカー」が、「屋根無し+1人乗り+タイヤむき出し」になった理由は、
当時の技術ではこれが「最速の形」だったから。
最高速を上げる為、全面投影面積を可能な限り小さくして空気抵抗を削減する必要があり、
そのためにはコクピットを覆う屋根も、大きなタイヤを覆うフェンダーも無い方がいい。
また、軽量化・低重心化という面でも「屋根無し+タイヤむき出し」は大いに有利だったはず。
このように、当初は「速さ」を求める歴史の中で形作られた「フォーミュラカー」だが、
いつしか、市販車ベースで戦う「ツーリングカーレース」「GTカーレース」や、プロトタイプカー
レースとの差別化が大きな意味を占めるようになった。
つまり、「速さ」を追求するのではなく「フォーミュラカー」のアイデンティティを維持するために、
「屋根無し+タイヤむき出し」という基本形が維持され続けてきた。
技術の進歩と共に「速さ」を決める条件は大きく変化している。
例えば「空力」で、「タイヤむき出し+屋根無し」は大きなマイナス要素。
現代のレーシングカーでは空気抵抗・ダウンフォースのバランスや、空力安定性が速さを
決める重要な要素だが、かつて「速さの追求」の為の基本形は、空力的に足かせとなっており、
その足かせを克服するためにF1では全チームが多額の資金を投じて風洞実験やCPU
シミュレーションを繰り返している。
つまり「理にかなわないフォーミュラの形」ゆえの難問に日々悪戦苦闘。
これって全然、科学的じゃないと思うのは僕だけだろうか?
だが、何よりも問題なのは、「屋根無し+タイヤむき出し」というフォーミュラカーの基本形が、
このカテゴリーにおける重大事故の危険性を大きく高めているという点。
だが、僕たちは多くの悲劇に接しながら、「何の為にドライバーを危険に晒し続けるのか?」
という根本的な問いを、これまで意図的に避け続けていたのではないだろうか?
「フォーミュラカーとはそういうものだ」という、決して本質的とは思えない言葉の前に、
我々が何を守ろうとし、その代償として何を危険に晒し、その結果、
どれほど貴重なものを失ってきたのかということを、そろそろ真剣に
考えるべきではないかと思うのだ。
この20年ほど、レーシングカーの安全性が飛躍的な進歩を遂げたことは間違いない。
カーボンファイバー製の強固なモノコックが多くのドライバーを無傷で生還させ、
サーキットが安全性向上への努力を重ねた結果、死亡事故は驚くほど減少している。
だが、多くの重大事故で「幸運」が味方したケースも少なくないことを忘れてはいるように思う。
深刻な事故につながらなかった「紙一重」の奇跡を、何度となくサーキットで目撃している。
ほんのわずかな偶然が最悪の事態を防いでくれたということは、その逆もまたあり得るのだと
いうことを、我々はどれだけ深刻に受け止めてきただろうか?
F1マシンの安全性向上に、むき出しタイヤをフェンダーで覆い、コックピットに戦闘機のような
強化ポリカーボネートのキャノピーを取り付けるだけで、重大事故のリスクを大幅低減させる。
当然、マシンは重くなり、全面投影面積も増えるだろうが、ここ10年レギュレーション改正が
常に「速くなり過ぎたマシンのスピードやラップタイムを抑制する」目的で行われていた事を
忘れてはならない。
そもそも、みんなが同じ条件=「フォーミュラ」で戦うのが「フォーミュラカーレース」の原点。
それに単に速さを求めるのなら、他にいくらでも方法はあるはずだ…。
それに、「屋根付き+フェンダー付きF1」はより洗練されたエアロダイナミクスを手に入れ、
各チームの空力開発の効率化、ひいてはコスト効率向上をもたらす可能性もあるだろう。
洗練された空力は、新たな単座レーシングカーの美しさを産み出すかもしれない。
又、フェンダーやキャノピーで表面積が増えた分は、ドライバーの識別がハッキリできる
カラーリングを施し、余ったスペースは新規のスポンサー用スペースとして売り出せばいい。
「F1とは何?」との問いに「モータースポーツの最高峰」と答える度に、居心地の悪さを感じる。
「むき出しタイヤとコクピット」という「葉巻型F1時代に作られた最速の文法」をベースとした
フォーミュラカーは「世界最速のマシン」を名乗るには、あまりにも洗練を欠いているし、
ガソリン内燃機関が主役の座を終えようとしている時代に、大量の燃料から巨大パワーを
産み出すパワートレインも、決して自動車技術の最高峰や未来系を示すものでは無い。
時代に合わない形で特異な進化を続け、拡大を続けてきたという意味では、「進化」より、
むしろ「恐竜化」という言葉で表現するほうが良いのではないかと思うこともある。
「屋根付き+フェンダー+電気モーター駆動」という、「巨大ミニ四駆」のようなF1を目指すべきと
主張すれば、大多数のF1ファン、モータースポーツファンから呆れられ、批判され、見放される
かも知れないが、僕は本気で、それこそが「モータースポーツの世界最高峰」を標榜する
F1の進むべき道だと思っている。
洗練されたエアロダイナミクスによる美しいボディ形状と、高性能モーターが産み出す暴力的な
加速力、そして何よりも大切なのは、ドライバーたちの安全性を飛躍的に高めることが、
既存のフォーミュラの呪縛を離れることで可能になるということだ。
F1だけじゃない、全フォーミュラカーレース、特に多くの若者が明日を目指して戦ってる
下位カテゴリーでも「守るべきものは何なのか?」という原点に帰って、フォーミュラカーの
定義を見直すべきではないだろうか?
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◇この記事の内容について・・・
100%では無いにしろ、共感できる。
その時代、その時代の先端技術こそF1という観点からすれば、
安全性確保を全ての優先事項にする(その結果としてフェンダー&キャノピー)という点で共感。
一般道より安全とか、確率論での安全性向上ではなく、
1人でも死亡事故を起こしてはダメ。
モータースポーツは、他競技に比べてリスクが高いのは仕方無い・・・との考え方自体が危険。
かつて、セナが志望した後、F1の安全性は飛躍的に進化したはず。
だから、マッサは死亡事故に至らなかった・・・という思考ではなく、
スレスレの確率で運良く生還できたのだから、二度を起こさない為にはどうするか?
という観点からのフェンダー&キャノピー案なら、受け入れてもいいのではないか?
そのモノサシは、安全性1つなのだが。
レーシングカート時代に、あるサーキットでカーターが亡くなった事例もあるし、
同じチームだったあるF1有望レーサーも箱で亡くなった事例もある・・・
身近にそのような事を見てきたからこそ、モータースポーツは安全であってほしい。
一般乗用車には、アクティブセイフティ(事故が起きないようにどう守る)と、
パッシブセイフティ(事故が起きた時にどう守る)という考え方があるが、
アクティブから考えれば、二度と同じ過ちをしない為の究極策が、まだF1には不足。
確かに「屋根無し+むき出しタイヤ」の方が格好いい。
自分もそれで走る方が当然好きである。
しかし、スポーツという大きな視点で見ると、そうも言っていられないなと考えざるを得ない。
◇この記事の内容以外について・・・
このように、ファンを敵に回してでも、論議をしようとする所が最も重要ポイント。
それが進化・改革への道だから。
確かに、そんなF1なら興味なくなるよ・・・というファンも多い事でしょう。
それをこの著者は予測できていながら、記事化して、問題提起した所に拍手。
本来は、現場にいる関係者から声が上がってもおかしく無い事。
レーサー達は、コンマ1秒を削る事に必死だから、協会・主催者・運営者等、
マネジメントのトップにいる方々から、上記に限らず、問題提起をしながら、
変革していくべき。
安全性だけの問題ではなく、
少子化対策にモータースポーツ界はどう対処するのか?(他競技では始まっている)
環境保護意識の世界的向上にどう対応するのか?
石油枯渇に対して、中長期VISIONで対応できるのか?
経済環境の悪化への対応をどう図るのか?
総合型地域スポーツクラブ増加や国の奨励にどう立ち向かうのか?
考える事はいくらでも有り、その期限が迫っている状況。
モータースポーツへの入口=カート人口が減れば、日本のモータースポーツも
衰退してしまう。親の経済状況が悪化すれば、キッズやジュニアカーターが減り、
トップカテゴリーへ夢見る若者も減ってしまうかもしれない。
(これは、是非、カート界がトップカテゴリーと連携して動くべき)
4輪だけの問題ではなく、2輪も全く同様。
色々な観点から、問題提起・課題解決策の立案・実行が求められます。
それが単体・単発ではなく、複合・継続して現れないといけません。
(自分も、文句を垂れるだけでなく、外側から、実行に移しつつありますので、
モータースポーツ関係者も内側から多くの人が動いてほしいですね)
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